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AWS Glueジョブ(PySpark)でデータ移行した話

データウェアハウス開発部の高野です。現在はオンプレミスの電子カルテデータ基盤のAWS移行のプロジェクトに参画しています。

今年、JMDCではアドベントカレンダーに参加しています。

qiita.com

本記事は、JMDC Advent Calendar 2024 7日目の記事です。

はじめに

電子カルテデータ基盤のAWS移行を進めている中、オンプレミスの旧データ基盤のデータ移行が要件の1つとしてありました。AWSでは主なデータベースとしてAmazon Redshift Serverlessを採用しており、そちらに移行データを連携したい、データ移行に必要なデータ形式が様々だったことからデータ移行はAWS Glueジョブ(PySpark)を使って対応しました。データウェアハウス開発部ではSQLでのデータ変換が主流ですが、今回AWS Glueジョブ(PySpark)を使って良かった点について書いてみたいと思います。

Sparkは大容量のデータを複数のノードに処理対象を分散させ、高速で処理させることを目的としたフレームワークであり、PySparkはSparkを実行するためのPython APIとなります。 AWS GlueはAWSで提供されているサーバーレスのETLサービスです。ETLジョブとしてPySparkのジョブを作成することもでき、AWS Glueでは拡張機能も提供されています。 詳しくは以下を参照ください。

www.databricks.com www.databricks.com docs.aws.amazon.com

AWS Glue バージョンは、現時点で最新の4.0を使っています。

AWS Glue バージョン - AWS Glue

旧データ基盤の処理フローとデータ移行のポイント

以下の図のとおり、医療機関単位でETLを行っており、その後、データベースから顧客に納品するため条件に応じたデータセット(csv)を出力し、csvやExcelの変換リストを使い、データクレンジング処理をかけてクライアントに納品していました。

オンプレミスの電子カルテデータ基盤処理フロー

データ移行要件としては、データベースのデータに加えて、データクレンジングした結果も必要でした。

以上から、ETLの変換をした結果の変換後csvがデータベースのデータと同等であり、データクレンジングするベースでもあるので、それをAWSにアップロードしデータ移行に使おうと考えました。
必要なデータの調査等を進め、以下がデータ移行の主なポイントとなりました。

  • データクレンジングの再現に必要な変換リストのデータ形式が様々
    • 旧データ基盤のマスターテーブル(AWS Glueデータカタログ)
      事業部門からAWS上に保管要望があり、Glueデータカタログ化する要件もあったのでそれをデータ移行でも活用したい
    • データセット出力後の変換リスト(csv、Excel)
      Excelデータもなるべく手間なく活用したい
  • 同じテーブルにロードした変換後csvでも医療機関ごとにカラムが不揃い
    医療機関ごとに取得できる情報が異なる場合等もあり、ETLする上で取得できる項目のみを変換後csvにしていたため
    医療機関ごとにテーブルにカラム指定でロードしていたため旧データ基盤上はそれで良かった
  • AWS上に構築する新データ基盤(Redshift Serverless)から移行データも活用できるようにする
    なるべく手間なくできればベター

データ移行のポイントに対するAWS Glueジョブ(PySpark)での対応

DataFrameで必要なデータを簡単に組み合わせて処理できた

DataFrameとは名前付きの列を持つデータの分散コレクションです。概念的にはリレーショナルデータベースのテーブルやPythonのPandas DataFrameと似ていますが、Sparkで最適化が行われているものとなります。

www.databricks.com

変換後csvと組み合わせる必要があったデータとして、データクレンジングに必要だった以下の項目がありましたが、何れもDataFrameに変換して組み合わせることができました。

  • AWS Glueデータカタログ

    AWS Glueデータカタログは、Amazon S3 データセットの構造メタデータ等(簡単に言うとテーブル定義)を保存するリポジトリです。

    docs.aws.amazon.com

    AWS Glueデータカタログのテーブルは、PySparkからも以下のサンプルコードのように一旦、AWS Glueの拡張機能であるDynamicFrameとして読み込んだ後にDataFrameに変換できます。

    AWS Glue PySpark 拡張機能リファレンス - AWS Glue

from pyspark.context import SparkContext
from awsglue.context import GlueContext

sc = SparkContext()
glueContext = GlueContext(sc)

# Glueデータカタログのテーブルから必要なカラムをselectしたものをDataFrameとして返す
def load_master(db_name, table_name, cols):
    dynamic_frame = glueContext.create_dynamic_frame_from_catalog(database=db_name, table_name=table_name)
    return dynamic_frame.toDF().select(cols)

master_df = load_master("master_db", "master_table", ["id", "code", "name"])
  • Excelの変換リスト

    PySparkでは、Pythonのライブラリも使えるメリットを活かして以下のサンプルコードのようにS3バケットに格納してあるExcelファイルをPandas DataFrameとして読み込んだ後にSpark DataFrameに変換できます。

from pyspark.context import SparkContext
from awsglue.context import GlueContext
import pandas as pd

sc = SparkContext()
glueContext = GlueContext(sc)
spark = glueContext.spark_session

excel_key = "s3://input_bucket/resorces/sample.xlsx"

# pandasでExcelファイルの読み込み(1行目がヘッダの場合)
pandas_df = pd.read_excel(excel_key, header=0)

# spark DataFrameに変換
spark_df = spark.createDataFrame(pandas_df)

sample.xlsxの内容

DataFrameでカラム不揃いのcsvファイル読み込み対応が簡単にできた

旧データ基盤の変換後csvを調査の結果、テーブルごとにcsvカラム数でパターン分けできたので、以下の対応で対処しました。

  • schemaをカラム数により使い分け

    DataFrameでschema指定で読み込むと、先頭から順にcsvのカラムが割り当てられて、余ったカラムはNULLとなるので、StructFieldの順を変えて読み込むことで対処しました。

    移行データのテーブルのカラム構成は、移行元データベースのテーブルのカラム(col_a~e)+クレンジング後のcol_b、col_eカラム(DataFrame読み込み時はNULLで後の処理で変換リストにより変換後の値を格納想定)、変換後csvは以下の2パターンだった場合、 DataFrame読み込み時にやりたいこととしては、以下の図のようなイメージです。(便宜上、csvファイル内容も表形式で表現しています。)

    • 医療機関Aでは変換後csvにcol_a~e全てカラムが存在する
    • 医療機関Bでは変換後csvにcol_a、b、eの3カラムのみ存在する

やりたいことイメージ図

以下は上記の場合のサンプルコードとなります。想定外のカラム数だった場合は例外となるようにしています。

from pyspark.context import SparkContext
from awsglue.context import GlueContext

sc = SparkContext()
glueContext = GlueContext(sc)
spark = glueContext.spark_session

# 入力csvのカラム数取得
def get_csv_col_count(csv_key):
    df = spark.read.format("csv").option("header", False).load(csv_key)
    return len(df.columns)

# csvのカラム数に応じたカラムとその後ろに欠損カラム、移行処理で格納するカラムの順でStructFieldを構成
def get_csv_schema(csv_col_count):
    if csv_col_count == 5:
        csv_schema = StructType([
            StructField('col_a', LongType(), True),
            StructField('col_b', StringType(), True),
            StructField('col_c', DecimalType(8, 4), True),
            StructField('col_d', IntegerType(), True),
            StructField('col_e', StringType(), True),
            StructField('cleansing_col_b', StringType(), True),
            StructField('cleansing_col_e', StringType(), True)
        ])
    elif csv_col_count == 3:
        csv_schema = StructType([
            StructField('col_a', LongType(), True),
            StructField('col_b', StringType(), True),
            StructField('col_e', StringType(), True),
            StructField('col_c', DecimalType(8, 4), True),
            StructField('col_d', IntegerType(), True),
            StructField('cleansing_col_b', StringType(), True),
            StructField('cleansing_col_e', StringType(), True)
        ])
    else:
        csv_schema = None

    return csv_schema


# カラム数からスキーマ情報を決定
input_csv_key = "s3://input_bucket/data/001/sample.csv"
csv_col_count = get_csv_col_count(input_csv_key)
csv_schema = get_csv_schema(csv_col_count)
if csv_schema == None:
    raise Exception("想定されていないカラム数のcsvです。")

migration_df = spark.read.format("csv").option("header", False).load(input_csv_key, schema=csv_schema)

Redshift Serverlessへの連携もスムーズにできた

昨年にAmazon Redshift でAWS Glueデータカタログの自動マウントができるようになったので、こちらを活用しました。

aws.amazon.com

Glueジョブ(PySpark)では、処理後のデータはParquet形式でS3に出力まで実施し、移行対象の8種類のテーブルのAWS Glueデータカタログを作成しておけば、Redshift Severlessからクエリできる状態となったので、S3にデータ出力後のロード等の作業は不要で済みました。

おわりに

必要なデータを全てDataFrameとして読み込み、簡単に組み合わせて処理、不揃いなcsvの処理も吸収できたので、移行対象の8種類のテーブルに対して、8つのGlueジョブ(PySpark)を作成+そのジョブを医療機関単位で実行していくGlueジョブ(Python Shell)を作成するのみで比較的シンプルに対応できた印象です。当初データクレンジングの変換リストは全医療機関共通だったため、RedshiftでまとめてSQLで処理も考えましたが、それだと、より実装に手間がかかったのではと思います。(使用する各変換リストのテーブル化、変換後csvカラム数パターン分のテーブル作成×データ加工するクエリ実行×8種類のテーブル分・・等々)

今後もGlueジョブ(PySpark)を使えそうな場面があれば使っていきたいと思います。 最後までお読みいただきありがとうございました。

明日8日目は、山岡さんの「AWS Datasync利用時のS3のイベントについて」です。お楽しみに!

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