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埋もれた知識を掘り起こせ!老舗プロダクトを支えるチームのナレッジ継承術

この記事はJMDC Advent Calendar 4日目の記事です。

今年もJMDCではアドベントカレンダーに参加しています。 クリスマスまでの25日間、毎日投稿していきますので楽しみにしていてくださいね!

qiita.com

こんにちは、JMDCでプロダクトマネージャーを務めている小邦です。製薬本部営業企画推進部とプロダクト開発部分析システムグループを兼務し、『JMDC Data Mart』(以下、JDM)の開発・運営に携わっています。 この記事では、老舗プロダクトであるJDMを次の時代に繋ぐため、私たちのチームが進めているナレッジ継承・共有に向けた取り組みをご紹介します。

JDMの紹介と私たちが直面したナレッジ継承・共有の問題

まずは、私の担当プロダクトであるJDMについてご紹介します。JDMは製薬企業向けにヘルスビッグデータを活用した分析サービスを提供するプロダクトです。膨大なヘルスビッグデータを基盤に、マーケティング業務や医薬品の安全性監視業務をサポートする多様な機能を提供しています。

糖尿病薬のトリートメントフロー

片頭痛×予防薬の市場規模の経年推移(診療科大分類別)

JDMは2008年に健康保険組合由来のデータを搭載してローンチした後、2017年に医療機関由来のデータを搭載した『JDM-HP』、2022年に調剤薬局由来のデータを搭載した『JDM Pharmacy』をローンチし、国内の主要なヘルスビッグデータを全て扱うことのできる分析プロダクトとしてサービスを発展させてきました。 また、ヘルスビッグデータを軸としたプロダクトの発展を図るのみならず、長い歴史の中で様々な機能を追加・改修し、機能軸での強化も図ってきました。その結果、JDMは製薬企業のパートナープロダクトとして独自の立ち位置を築いています。

しかしながら、老舗プロダクトであるがゆえの問題も存在しています。それは、十分なナレッジの継承や共有が行われていないことです。例えば、開発する機能の要件を固める中で、長年JDMに携わっているメンバーだけが知る機能の存在が明らかになることがありました。こうした状況下では、当初の想定より開発に時間を要することや、古くからある仕様の意図が十分に理解されないまま開発を進めることで、プロダクトの品質に重大な影響を与えるリスクが生じます。

このようなナレッジの継承や共有の問題は、JDMのように長い歴史を持つプロダクトに携わる多くの方が直面しているのではないでしょうか。次節以降では、老舗プロダクトであるJDMを支える私たちが、直面した問題の解消に向け、ナレッジの継承と共有に関してどのような取り組みを行っているのかをご紹介します。

ナレッジの偏在の解消に向けた取り組み

老舗プロダクトであるJDMが抱えるナレッジの継承や共有に関する問題に対し、私たちのチームでは以下の取り組みを進めています。

Slackの「Working Out Loud(大声作業しなさい!)」チャンネルの活用

まず取り組んだのは、Slack上に「Working Out Loud」チャンネルを作成し、日々の業務内容や疑問点をオープンに共有することです。

  • 業務内容の共有:JDMは現状2つのスクラムチームで開発を進めており、それぞれ異なる開発タスクに取り組んでいます。こうした業務内容のばらつきが原因となって生じたのがナレッジの継承や共有に関する問題です。自らが携わった機能には詳しい一方、情報共有が十分になされなかったことで、携わったことのない機能に関する知識が乏しい状況が生じました。そこで、業務に取り組む中での思考のプロセスをWorking Out Loudチャンネル上で投稿することで、後から振り返った時になぜ現状の仕様になったのか、また不具合がどのように発生したのかを理解しやすくしました。

業務内容の共有の例

  • 疑問点や課題のオープン化:業務内容だけでなく、分からないことや困っていることもWorking Out Loudチャンネルで積極的に共有するようチーム内で推奨しています。疑問点を明確にすることで、特定のメンバーだけが知る情報や解決策がチーム全体に共有され、ナレッジの属人化の抑制に繋がります。「これは皆が知っているだろう」「前に説明したし大丈夫だろう」という思い込みが、ナレッジの偏在を発生させ、ナレッジの継承を止めることにも繋がります。分からないことを分からないといえる場を作ることにより、ナレッジが偏る状況を食い止めるように努めています。

疑問に関する共有の例

この取り組みの結果、以下の効果が得られました。

  • ナレッジ共有の促進:メンバー間で情報がオープンに共有されるようになり、徐々にチーム全体の知識レベルが底上げされ、プロダクトや技術への理解が深まりました

  • 心理的安全性の向上:疑問や課題を気軽に共有できる環境が整ったことで、メンバー間のコミュニケーションが活性化し、以前よりもメンバー間での情報共有やアイデアの発案の頻度が高まりました

多くの企業でリモートワークが取り入れられる中で、とりわけ新しいメンバーに対するナレッジ共有に課題を感じられている方もいらっしゃるのではないでしょうか。分からないことや考えていることを発信するチャンネルがあるだけでも質問することに対する心理的なハードルは下がる上に、知らない間に生まれていたナレッジの偏在の解消にも繋がります。ぜひWorking Out Loudチャンネルを使って大声で仕事をしながら、ナレッジの共有を進めていってください!

筋肉質なプロダクトへの変革を目指す「プロダクトの式年遷宮」

「式年遷宮」とは、神社が定期的に社殿を建て替える伝統行事を指します。先述の通り、長年の運用でプロダクトが複雑化しており、特定のメンバーしか知らない機能や複数の分析メニューで重複して提供されている機能が存在しています。これにより、開発効率の低下やナレッジの偏在といった問題が顕在化してきました。 こうした問題を解決するために、JDMではプロダクトをゼロから見直し、再構築する「プロダクトの式年遷宮」プロジェクトにおいて、以下の内容に取り組んでいます。

  • 筋肉質なプロダクトへの変革:機能の統廃合を実施し、顧客に利用されていない機能や分析メニュー間で重複している機能を整理し、筋肉質なプロダクトへの変革を図る

  • モダンな技術スタックへの移行:新たな開発言語としてGoを採用するなど、モダンな技術を取り入れることで開発効率と保守性を向上させ、キャッチアップがしやすく、成果を生み出しやすい環境を整備する

上記のようなプロダクトの式年遷宮に向けた取り組みを進める中で、チームに以下の変化が現れました。

  • プロダクトへの向き合い方の変化:従来は既に完成している機能の改修に携わることが多く、個々のメンバーが各機能の提供する価値について考える機会が多くはありませんでした。今回、機能の統廃合を含めた再構築を行う過程で、各々がプロダクトや機能の提供価値について考える機会が増え、スプリントレビューの場などでエンジニアから積極的に意見や質問が生まれるようになりました。

  • 埋もれていたナレッジの掘り起こし:プロダクトの再構築を進める過程で、長年携わっているメンバーや機能の初回開発時にコアメンバーとして携わっていたメンバーから、ドキュメントに残っていないような実装時の細かい経緯や注意点が共有される機会が生まれるなど、偏在していたナレッジや暗黙知と化していた情報をチーム全体のナレッジとすることができました。

プロダクトの式年遷宮に取り組む間は新機能の追加に制限がかかる上、プロダクトの規模が大きいほどプロジェクトに時間を要するため、何度も行えることではありません。しかし、ナレッジの継承が途絶えた状態で新機能の開発に取り組むことは、ビジネス面でのリスクを孕んでおり、何より価値を届ける対象である顧客に対してどこかで大きな迷惑をかけてしまう事態にも繋がりかねません。JDMでは様々な要因が重なったことで、提供開始後16年で初の式年遷宮に取り組むことになりました。ただ、特定のメンバーだけが知る機能がある、影響調査をして初めて明らかになる機能がある状況は今思うと非常に危険であり、もっと早く取り組んでも良かったのではないかと思うほどです。

振り返りと今後の展望

ここまでJDMチームで行っているナレッジの偏在の解消に向けた取り組みについてご紹介してきました。まだ道半ばではありますが、ナレッジを誰かのものではなく、チーム全体のものにしていく取り組みに対して、確かな成果を感じ始めています。

先人たちが築いてきたプロダクトを受け継いだ私たちの使命は、より良いプロダクトへと進化させ、次の時代へ受け継いでいくことだと考えています。自分たちが携わっている時代だけ繁栄すれば良いという考えではなく、長期的に価値を生み出せるプロダクトにしていくことが重要です。すなわち、自らが携わらなくなった後の姿を想像しながら、プロダクトに向き合う姿勢を持ち続けることが求められます。

各々がこのことを意識し、継続的に改善を重ね、ナレッジを受け継ぎつつ、さらなる価値を提供できるプロダクトを目指してこれからもJDMチームは進んでいきます。

明日5日目は由利さんによる『ヘルスコネクト移行とバイタルデータを取得する際に考えたこと』です。お楽しみに!

ヘルスビッグデータを活用して、新たな未来を創りあげませんか?

当社グループでは、今回ご紹介したJDMの他にも、健康推進アプリの「Pep Up」や保健事業の支援を行う「らくらく健助」、株式会社cotreeが提供するオンラインカウンセリングサービスなど、私も把握しきれないほど多くのサービス・プロダクトを提供しています。 ヘルスビッグデータを武器に、人々の健康に貢献するプロダクトをともに創り上げていきませんか?興味を持たれた方は、ぜひカジュアル面談で私たちのプロダクトやチームについて話しましょう!

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